いま哲学に何ができるのか?

いま哲学に何ができるのか?

著 | ガリ—・ガッティング
訳 | 外山次郎
2750円 (税込) ※1

ページ数:360ページ
発売日:2016/8/11
ISBN:978-4-7993-1940-6

Product description 商品説明

第1章「政策論争は不毛か?」では、すぐれた議論を行う方法を示すための事例として政策論争を取り上げる。ここで示された方法は、ほかの章でも頻繁に使うことになる。
 続く6つの章は、今日の社会でもっとも強大な力といえる、科学、宗教、資本主義をテーマに取り上げる。それぞれについて、関連する哲学的思考のツールを使って批判的に検討していく。ここでの「批判的」というのは、否定的な批判とか、論駁するという意味ではなく、その価値と限界をていねいに評価するという意味だ。
 第2章「科学の取扱説明書」では、科学的主張を評価するときに重要となる、論理的原則に着目する。第3章「科学の限界」では、科学者が関心を寄せる哲学的な問題を取り上げ、そうした問題を論証するにあたり、哲学の知見を用いない場合に生じる問題を紹介する。
 第4章「科学にもとづく無神論」では、さらに高度な哲学的省察に移り、宗教哲学の中心となる論点「神の存在を信じることは理にかなっているか」について、かなりくわしく論じる。ここでは、ある哲学的見解に対するくわしい分析や批評の方法を見ていくことになる。
 第5章「宗教的不可知論」は、宗教的信念は合理的であるという見解を展開し、それを擁護する作業に移る。この章でわたしは自分の見解を述べるが、その目的は、哲学論争の内容を例示するために必要となる哲学的ツールを提供することである。この点はとくに強調しておきたい。
 第6章「幸福、仕事、資本主義」と第7章「資本主義社会における教育」では、幸福の本質、仕事の価値、資本主義の道徳性、教育の目的について論じる。とても難しく思えるテーマかもしれない。ここでの議論では、先ほどあげたテーマがお互いに関連するものであり、すべてを結びつけることでよりよいくらしに必要な見取り図が描けることを示していく。
 続く2つの章は方向性をがらりと変える。どちらの章も、具体的な社会問題に対して、哲学がどのように貢献できるかを示すものだ。第8章「アートの価値とは?」では現代アートの価値を、第9章「人工妊娠中絶は殺人か?」では堕胎の道徳性を取り上げる。この2つの章を読めば、学術的哲学者たちが交わす議論とはどのようなものか、哲学者の専門的知識が、社会問題を議論するなんらかの助けになるかがわかるだろう。
 最後の第10章「哲学にできること」は、哲学の歴史上重要な節目について考え、哲学的思考全体を概観する。そして、20世紀のアメリカ人哲学者ウィリアム・セラーズが提唱した自明な世界像(日常的な客体の世界)と科学的世界像(分子と原子の世界)の区別を用いることで、現代思想における哲学の役割を明確にする。(「序文」より)

Index 目次

第1章 政策論争は不毛か?
 議論が議論にならないとき
 善意解釈の原則
 関連論拠の原則
 確信と議論の限界
 意見の不一致と転向
 認識同等者との意見の不一致という難題
 議論の価値とは?
第2章 科学の取扱説明書
 予測成否の原則
 相関関係の研究とその限界
 研究室と現実社会
 「ここでうまくいった」と「あそこでもうまくいく」のギャップ
 根拠にもとづく公共政策
 気候科学
 可能性とその対価
第3章 科学の限界
 意識と脳
 メアリーとゾンビ
  色覚異常の神経科学者
  自分と瓜二つのゾンビ
 神経科学と自由意志
 幸福と道徳の哲学
 論証の価値
 憂鬱と精神医学の限界
 無の物理学
科学にもとづく無神論
 ドーキンスによる有神論批判
 ドーキンスの無神論
  議論なき議論
  宇宙論的議論
  議論なき議論の失敗
 ドーキンスによる進化論的議論
 複雑性議論
 悪の問題
 延命する有神論
第5章 宗教的不可知論
 神の単純性と必然性
 悪と全知の神
 不可知論?
 哲学者が神を信じるとき
  魅力的な生き方
  宗教体験
  形而上学的議論と歴史的議論
 信仰を支持する主張
 知識なき信念
 不可知論者の宗教
 宗教と政治
第6章 幸福、仕事、資本主義
 資本主義
 幸福
 仕事
 資本主義の問題点
 リベラル派の反対論
 資本主義を再考する
 なにをすべきか?
 民主的教育
第7章 資本主義社会における教育
 ある問題
 大学の存在意義
 手段としての教育
 商品としての教育
  教えることの対象
 試験の役割
 教えることは科学か、技能(アート)か
第8章 アートの価値とは?
 アートとしてのブリロ・ボックス
 モーツァルトはビートルズよりもすぐれているか?
 アート、愛、道徳
 前衛芸術(アヴァンギャルドアート)と大量芸術(マスアート)
第9章 人工妊娠中絶は殺人か?
 生命尊重論と選択尊重論
 マクマハンの選択尊重論
 トムソンの選択尊重論
 マーキスの生命尊重論
 堕胎と信仰
 道徳性と法律
第10章 哲学にできること
 哲学にできないこと
 哲学がしてきたこと
 いま哲学にできること

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ガリ—・ガッティング

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